夏の全国高等学校野球選手権大会(夏の甲子園)の開会式は、高校野球の象徴的な瞬間だ。
全国の強豪校が集い、甲子園球場のグラウンドで堂々たる入場行進を行う。
その際に流れる入場行進曲は、選手の士気を高め、観客に感動を与える重要な要素である。
2025年の入場行進曲はOmoinotakeの「幾億光年」に決定した。
この選曲の背景や、甲子園の入場行進曲がどのように選ばれるのか、その秘密に迫る。
入場行進曲の歴史と意義
甲子園の開会式で入場行進曲が演奏されるようになったのは、戦後の1947年(第29回大会)頃からとされる。
この音楽は、選手たちの行進をリズミカルに支えるだけでなく、大会の雰囲気や時代背景を反映する役割を持つ。
明るく力強いメロディは、若者の情熱や団結を象徴し、観客に一体感を与える。
2025年の「幾億光年」は、切なさと希望が共存するメロディで、青春の複雑な感情を表現し、選手や観客の心に響く選曲として注目を集めた。
選曲の基準とプロセス
入場行進曲の選定は、朝日新聞社と日本高等学校野球連盟が中心となり、慎重に行われる。
選曲の基準には以下のポイントがある。
まず、「明るく親しみやすい」こと。
高校生や観客が共感しやすいメロディが重視される。
次に、行進に適したテンポ(120~130BPM程度)であること。
これにより、選手の歩調が揃い、観客にもリズミカルな印象を与える。
さらに、歌詞や曲調が「青春」や「前進」を連想させることも重要だ。
「幾億光年」は、2024年にドラマ「Eye Love You」の主題歌として大ヒットし、若者を中心に広く愛された。
選考委員会は、この曲のエモーショナルなメロディと「遠く離れていても繋がっている」というメッセージが、甲子園を目指す高校生の努力や絆に通じると判断したのだろう。
選曲プロセスでは、音楽関係者や大会関係者からの提案に加え、ファンや視聴者の声も参考に候補曲がリストアップされる。
その後、議論を重ね、時代背景や高校生の心情を考慮して最終決定に至る。
時代を映す選曲の変遷
過去の入場行進曲を振り返ると、時代ごとの流行や社会情勢が反映されている。
1960年代は「東京オリンピックマーチ」など荘厳な曲が選ばれ、国家的な高揚感を表現。
1980年代以降は「宇宙戦艦ヤマト」や「タッチ」など、アニメやドラマの主題歌が人気を博し、若者文化との結びつきが強まった。
2000年代に入ると、J-POPが主流となり、AKB48や嵐などのヒット曲も登場。
2023年にはYOASOBIの「アイドル」が選ばれ、現代的な感性が強調された。
2025年の「幾億光年」は、こうした流れの中で、若者の心に寄り添うエモーショナルな選曲として位置づけられる。
この曲は、コロナ禍後の「繋がり」や「希望」を求める社会のムードとも合致し、甲子園の新たな一ページを彩る。
選曲の裏話とエピソード
選曲には意外な裏話も多い。
過去には、歌詞が「別れ」を連想させるとして候補曲が却下された例や、演奏の難易度から外された曲もあった。
「幾億光年」は、オーケストラによる生演奏に適したメロディと、感動的な歌詞が評価されたが、選出には議論もあったようだ。
SNS上では、発表直後から「エモい!」「甲子園にぴったり」と絶賛する声が多数見られた一方、「アップテンポな曲が良かった」との意見も散見された。
このように、選曲は毎年話題を呼び、大会の注目度を高める。
また、著作権や編曲の制約も選曲に影響する。甲子園ではブラスバンドによる生演奏が行われるため、編曲が複雑すぎる曲は避けられる。
「幾億光年」は、情感豊かでありながら、行進に適したリズム感を持つため、演奏面でも理想的だったと言える。
まとめ
甲子園の開会式の入場行進曲は、大会の魂ともいえる存在だ。
2025年の「幾億光年」は、Omoinotakeの心揺さぶるメロディを通じて、選手たちの努力と絆、青春の輝きを表現する。
選曲には、時代背景や高校生の心情を反映し、伝統と現代性を両立させる工夫が凝らされている。
甲子園のグラウンドに響くこの曲が、どんなドラマを生むのか。2025年夏、球場でその瞬間を目撃するのが楽しみだ。

